Damask Rose [短編集]
「誰?…あぁ、いつもこの子と一緒にいる奴か」
顔だけをこっちに向けて、男が言った。
「離れてくんない?」
そう言うと同時に男が降参とでも言うかのように両手を上げた。
「何だ、男いんのか。流石に男持ちのやつにまで手は出さないから」
はせやんの言っていた言葉から想像した男と、何か少し違う気がした。
「柚」
走って来た柚を、俺の後ろに隠すように男から遠ざける。
「そんなに必死になられたら、何か奪いたくなる」
前言撤回。
コイツそうとう嫌な奴に違いない。
「じゃあ、ね」
あっという間に男は去っていったから、後には俺と柚の二人が残った。
少し間をあけて柚と向かい合う。
「何やってんだよ!一人で男に付いて行くなよ。柚は女なんだから、何かあったらどうすんだよ!さっきだって…」
しまった…
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