Damask Rose [短編集]


ゆっくり目を開ければ、目から眩しいくらいの陽の光が入ってきた。


「あっ、起きた?」


「壱也…」


何でこうなってるんだっけ?


「男子Aが女子コート側にいる男子Bにボールを投げて、そいつが取り損ねたの。そしたらちょうど柚ちんがそこにいたってわけ」


考えていたら、壱也がそれを察してか先に状況を説明してくれた。


「軽い脳震盪だって。頭、痛くない?」


壱也がそう言いながら私の頭を軽く、壊れ物に触るみたいに撫でた。


「全然平気。それより、男子AとかBとか失礼でしょ。いい加減名前覚えなよ」


「努力する」


笑ってる。
きっと口だけで、努力なんてしないんだろうなあ。


「そういえばさっき、ボールが当たる前に壱也の声が聞こえた気がする」


『柚!』
って叫ぶ声は、壱也の声だった気がするの。


「ありがとう」


照れ臭くて、顔なんて見れないから、俯きながら言った。


「あー本当に可愛いな!よし、もう少し寝てな。後は俺に任せろ。柚の敵は俺がとるよー」


「何、言ってんの!…えっと、敵とかって変なことしないでよ?」


立ち上がって進みながら、後ろ姿の壱也が手を振った。


心臓バクバクしてる…




**+α**


(谷宮!ほんっとうに…ごめん。頭痛くない?)

(平気だよ〜。…何かあった?)

何だかすごく疲れてるみたい。

(いや、えっと…。つか高坂ってバスケやってた?あの強さなんだよ〜)

…何したの?!
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