全国民模様制度
部長は打算的な狸の皮を被り、いつも通りのニヤニヤとした顔で俺を眺める。
「佐藤君はパンダだったかね」
「そう、みたいですね」
うんうんと数回頷くと、手元の書類をパラパラと捲る。あれは確か……先日回収したリストラの資料だった筈。
そうか、この模様で役に立たない人間を判別しようという訳か。
だとしたら……ちらっと見た所で、象柄をした巨体で動きの遅い山本か? いやいや、協調性の無い狼柄の佐野も対象だろう。
「我が社も本当に経営危機でね」
「こんな時期ですから仕方ないですね」
「分かってくれるか?」
「はい」
仲間を失うのは寂しいけれど仕方の無い事。
俺は味方ですよ。と、強く頷いた瞬間、部長の顔がぱあっと一気に明るくなった。
「ありがとう! 正直我が部における君の人件費が高過ぎてね」
嬉しそうに席を立つ部長の後ろ姿を呆然と見つめながら俺はふと思い出した。
今、東京にパンダがいないのは……呼び寄せる為の財政不足だという噂を。
【完】