HDD彼女
 入り口では、新入りの娘だろうか。俺の知らない店員が爽やかなスマイルを湛えたメイド服姿で優しく出迎えをしてくれる。
 その出迎え速度は、近隣にある牛丼屋など比較にならない程に早い。
 無意味な空白で埋め尽くされる時間というものを極端に嫌う俺たちオタクと呼ばれる人種の心の機微を押さえた、心憎いまで痒いところに手が届く接客が心の芯まで響く程に嬉しい。
 この辺りがこの店がメイド喫茶ブームというものが過ぎ去ろうとしている現在でも活況を維持できている理由ではないだろうか?

 メイドさんの顔に浮かんだ笑顔は営業スマイルであることは嫌という程に承知しているが――それでも、メイドさんの笑顔には乾いた砂漠に水を流し込むように心を癒される効果があるというものだ。
 本日の客の入りはそれなりに多いレベルといったところだろうか、常に客で溢れているこの店は客が絶えている光景というものを見たことが無い。
 まさに、俺たちオタクのオアシス的存在なのだ。

 そんな活況にも関わらず、待ち時間は無しに、実にスムーズなやり取りで席へと案内される。
 窓が無いこの店の、壁際の席に案内されて静かに椅子に腰を下ろす。
< 28 / 50 >

この作品をシェア

pagetop