HDD彼女
 電車内、ゲロを吐きそうになるようなオッサンが放つ特有のスメルに耐えること一時間……ようやく自分が降りる駅に辿り着く。

 その間に、俺がオッサンに足を踏まれたにも関わらず、何故だか俺が舌打ちされて小声で謝ってしまうこと二回。
 たまたま隣り合わせになっただけなのに、OL風の女性から露骨に嫌そうな顔をされながら、電車の揺れで少しだけ体重が掛かるような体勢になってしまっただけなのに思いっきり睨まれること一回。
 まあ、これは数少ない女体との接触する機会という報酬もあったので多少の精神的苦痛はやむを得ないものであるとは思っているのだが――。

――ともかく、だ。

 ようやく電車から降りた時には心身ともにヘロヘロに疲れてしまった。
 本当に、俺のようなオタク的な容貌をしている人種には非常に住みにくい世の中である。
 仮に、俺がガタイの良い体育会系の学生のような容貌をしていれば、謝ってきたのはあの臭いオッサンだろうし。
 俺がモデルのようなイケメンであればOLのお姉さんは自分から俺に身体を預けてきたに違いないだろう。

――しかし、悲しいかな。俺は少し人よりも小太りであり、顔面の平均値も極めて低いのである。
< 32 / 50 >

この作品をシェア

pagetop