HDD彼女
 駅から愛車であり、購入してから半年が経過した電動アシスト付きの自転車である『地獄の業火号』に跨って、ゆっくりと景色を眺めなら走り、二十分ほどで自分が住むアパートへと到着する。
 その間に、犬の散歩をさせているオバサンにまるで不審者を見るような目でジロジロ見られるのには慣れたものである。
 ただ、子連れのお母さんに、俺の姿が見えた途端に自分の子供を自分の背後に素早く隠すような動作を取られるのはいつまで経っても心に隙間風が吹くような悲しみに捉われる。
 確かに、俺は子供に視線を向けたのは事実なのだが、それはロリ的な視点から子供を見た訳ではなく『ああ、親子連れで散歩とか良いなあ――』という、自分ながらにほのぼのとした感情から視線を向けただけなのであって――なのに、そこまで警戒心を顕わにされるとさすがに若干ながら傷付くのだ。

 まあ、それもこれもいつもの事である。
 悲しいけど、慣れっこだ。
 俺が通り掛かるだけで、何故か猛烈に鳴き始める犬の声をBGMにして日の沈みかけた街を自転車で走るのであった。
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