HDD彼女
第2章

女の子

『――な……何だ!? お前は誰だっ!?』

 というような声は出なかった、脳の表層よりもずっと奥、無意識の内ではきっと叫んでいたつもりなのだが――現実の俺は、声さえ出すことも出来ずに立ちすくんでしまっていたのである。

――そもそも、だ。

 昼間に行ったメイド喫茶の中でさえも、メイドさんを相手にフード類を注文する際、声が裏返りそうになったほどに声を出す機会というものに激しく疎遠となっているような俺である。
 目の前で、全裸の女の子が眠っている――そんなエロゲのような、いやエロゲですらお目にかかれないようなベッタベタで非現実なシュチュエーションに、何事も無いように普段通りな対応が出来るはずもない。
 そんな図太い神経を持っていれば、現在のように引き篭もりのような生活なんてしていないだろうし、引き篭もるような生活をしていてもこの非常事態に声を出すだけの度胸があればネット上だけでも友人ぐらいは作ることが出来るだろう。
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