手
「ありがとうございました」
家の前で下ろしてもらったあたしは、そうジュンさんに告げる。
「お疲れ、また明日ね」
ジュンさんはそう言って、いつもと変わらない様子で手を振った。
再び走り出す車。
その様子を見ながら、あたしはしばらく立っていた。
ポケットの煙草を取り出して、火を付ける。
『元々は、元カレの相談されて仲良くなっただけなんだよね』
そう言っていたジュンさん。
『その内、ほっとけなくって。そしたら告白されちゃって……ね』
嫌いではないんだけど疲れちゃった、そう続けていた。
ほわーんとしてて、女の子らしい埜乃ちゃんが思い浮かぶ。
確かにほっとけない感じがして、あたしもついお節介してしまう。
自分の事なんてほっといて。
『けど佳奈ちゃんとかにも迷惑かかるし、もうちゃんと別れるわ』
そう言ったジュンさんの言葉に、何となくやりきれない気分になった。