†Orion†


「あぁ、最低、だな」



最低だと罵られても、この人は顔色ひとつ変えずにそれを認める。



「でも……、俺と優菜が別れたら、優菜は雅人くんと幸せになれるだろ?」



そしてそこに、我が子を思う気持ちなど一切出てこない。



「さっきから聞いていれば……」



すっかり冷めた唐揚を箸で弄んでいる浩平さんに、俺はできるだけ落ち着いた態度で言う。



「“俺が”とか、“優菜が”とか、大人の事情ばっかりじゃないですか。
奈緒ちゃんたちのことは何とも思わないんですか?」



血を分けた我が子の名前が出て、浩平さんはようやく苦悩の表情を浮かべた。


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