†Orion†


何度も“最後”だと言い聞かせて、結局は気持ちを抑え切れなくて。



でも……



「浩ちゃんとのことは、あたしたち家族の問題だから。もう……口出ししないでほしいの」



疲れ切ったような表情で言った優菜さんに、俺は“本当の最後”を感じた。



「……分かったよ」



再び歩き出した歩道。

肩を並べて歩いていくうちに、優菜さんの右手と俺の左手が何度か触れ合う。

そのたびに、俺たちは手を遠ざけて。



「………っ……」


「……泣くなよ」



どうして、彼女が泣いているのか。

俺は決して理由を訊かなかった。



.
< 231 / 359 >

この作品をシェア

pagetop