†Orion†


理由を訊いてしまったら、優菜さんの強い決心があっけなく崩れてしまいそうだったから。


何度目かに手が触れ合ったとき。

俺は優菜さんの冷たい手を、キュッと握りしめた。

優菜さんもまた、俺の手をキュッと握り返す。



「………っ……」


「……泣くなって」



優菜さんの涙は止まらなくて。

俺もまた、優菜さんを受け止めることすらできなくて。


寒空のした、冷えた互いの手が少しずつ温もりを帯びてくる。



「……ありがとう」



鼻声になった優菜さんがポツリと呟いた。


その意味も、俺にはじゅうぶんすぎるほど分かっていたから。



「……どういたしまして」


今にも零れ落ちてしまいそうな涙を堪えながら、俺は少しおどけてみせる。

やり場のない思いを抱えながら、何の会話もせず。

俺たちはただ、繋がれた手に互いの思いを注ぎあった。


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