†Orion†


「一回だけ、家族で食べに来たんだよ」


「いつ?」


「えー、いつとか覚えてないよー」



俺がいる時かな……。

厨房に立っていると、オープンキッチンとはいえホールの方なんかほとんど見ていないし……。

しかも杉浦さんがいない時間帯は、とくに。



「もう、すっごいかっこよくてさ。まさに美男美女ってかんじ? 子供もかわいいんだよねー。奈緒ちゃんとさくらちゃんって言ったっけー?」



楽しそうに話す三枝さんに、俺は複雑な気持ちになる。


杉浦さんに家庭があることは承知の上。

でも、こうやって現実を話されると、胸がズキズキ痛み出す。


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