†Orion†


「旦那さんね、プラネタリウムの職員やってるんだって。あんなイケメンがいたら、あたし、毎日でも通っちゃいそう」


「……へぇ」



止まった箸を再び伸ばし、卵焼きを掴む。

俺の手は微妙に震えていて、卵焼きを落とさないように慎重に口に運んだ。


杉浦さんの旦那さんをすっかり気に入っている様子の三枝さん。

彼女の口は止まらず、たった一度会っただけの旦那さんの話を延々とする。



「背が高くて、優しそうでさぁ。そうそう、声がすごーくいいのよ。低くて甘い感じ? 
あの声で“好き”-なんて言われたら、誰だってコロッといっちゃうわよー」



俺とは正反対だな。

背は高いほうだけど、自分のことを“かっこいい男”だとは思わない。

性格も優しいともいえず、たぶん俺は、ひねくれている部類に入るだろう。


そして何よりも、プラネタリウム職員という専門分野での仕事。



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