†Orion†


卒業したら就職という自然な流れに身を任せ、やりたいこともない俺とは大違いだ。



しっかりしていて、頼りがいの旦那さんなんだろうな、と思った。

話を聞いていくうちに、勝ち目なんてまるでないと思い知らされた。

もちろん、それ以前に杉浦さんは既婚者なわけだけど。



でも仮に結婚していなくても、そんなパーフェクトな人が杉浦さんの相手だったら。

彼女が俺に魅かれる要素なんて、ゼロに等しい。



「あれっ? もういくの?」


「……もう休憩終わりだぞ。早くしろよ」


「えー? まだあと十分あるじゃない!」



いつも、休憩はギリギリまでとるのに。

変わらない話題にほとほと嫌気がさしてきて、俺はいつもよりずいぶんと早く厨房に戻った。




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