【短】ふたりぼっちの乾杯
水槽に触るあなたの指に触れようとするけれど、壁に邪魔されて触れない。
水の向こうで困ったように笑うあなたの顔がゆらゆらと揺れた。
なんだか悔しくて、悔しくて、もう一度水を蹴った。
「ほら、もうちょっと餌やるから、機嫌直して。な?」
別にもうおなかはいっぱいなんだけど。
ぽろり、ぽろり、と餌が降って来たら、わたしはそれを口を開けて迎えた。
今度はおいしいかなって、そう思ったから。
あなたはそんなわたしを眺めながら、ふいにまた台所へ行った。
わたしは食べるのをやめてそれを見送る。
だって、おなかいっぱいなのにひとりで食べるなんて、そんなのバカみたいじゃない。