恋い≒病い
「大村さん。」

「はっはい?」

突然呼ばれた名前に、私の心臓が大きく跳ねる。

「どうかした?」

「や、何でも…。」

熱い頬を両手で押さえながら必死に平静を保とうとした。
間が悪い事に、私が頭の中であらぬ妄想を繰り広げる原因となった赤石駿平が、いつの間にか私の後ろに立っていた。

赤石駿平に対しては、いつもは素っ気無く返す私だが、今日に限ってはそう上手くはいかない。
頭の中を見られたわけじゃないが、あんな事を思い浮かべていたなんて。
そう考えるだけで恥ずかしさのあまり、頬の赤みは増し目の縁にも涙が溜まる。


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