紅き天
気恥ずかしくなった疾風は頷いて横に転がった。



「まったく、女の子にのしかかるなんていい度胸だわ。」


「のしかかってはないだろ。」


「じゃあ、なんていうの?」



単に言葉が見つからないらしい静乃と一緒になって疾風は頭を捻った。



「…馬乗り?」


「なんか嫌な言葉が出てきたわね…。」



苦々しく笑い、静乃は言った。



「とにかく、そういうこと。」


「はいはい、悪かった。」


「…疾風、私がふて寝した原因わかってる?」



やべっ…!



「悪いって!
怒んな。」



慌てて謝るも、静乃はすでに布団のなかに入った後だった。













こうして、疾風の甘い恋人らしい夜を、という淡い期待は見事に崩れ去ったのだった。





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