紅き天
馬を限界まで走らせたため、その日の真夜中には城に着けた。



馬車を目立たない所に止め、二人は城に忍び込んだ。



「いいか、狙いは家康と家光だぞ。
わかっているな、雑魚は無視しろ。」


「ハイハイ。」



適当に返事したのも無理はない。



これも何度も聞かされたのだ。



基子の合図で見張りを始末し、部屋に入る。



どうやらまだ起きているらしく、灯りがついている。



「馬鹿殿様め。
油が勿体ない。」


「しーっ、聞かれる。」



小声で基子を制し、一気に襖を開けた。



「なっ!?」



声を上げたのは疾風だった。



家光は余裕綽々でこちらを見据え



静乃を抱いていたのだ。



「静乃!?」


「ほう、こやつの名は静乃というのか。」



見せ付けるように家光は静乃を撫でた。




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