紅き天
「なんで貴様が!」


「知っていて来たのではないのか。」



意外、といった様子で家光は顎を撫でた。



「どうでもいいから静乃を返せ。」



目を怒らせ、疾風は一歩近づいた。



「寄ればこやつの首を掻き切る。
若き当主よ。」



家光は当主、という言葉を強調して言った。



「敵方の娘を助けるのか?
余の命令は一派皆殺しのはずだが?」


「そんなくだらないこと命令したのか。
…静乃がそんなに欲しいか?」


「欲しいからこんな事をしてお前達をいたぶっているのだ。
どうだ、市松、父親が恋しいか?
木更津、夫が恋しいか?」



馬鹿にしたような笑みを浮かべ、家光はまた静乃を撫でた。



< 223 / 306 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop