紅き天
「帰ってくれ。」


「嫌、帰らない。」



花が頭を振ると、髪に飾ってあった簪がシャランと音をたてた。



「私、疾風の力になりたいの。」


「いらないよ。
俺は他に頼る当てがある。」



そうだ、お前なんかの助けはいらない。



「…もしかして、あの時の女ですの?」


「関係ない。」



言って、戸を閉めようとすると、花は器用に中に滑り込んだ。



「お前!」



ツンと澄まして、花は勝手に中を見回した。



「へえ、ここが疾風の家なの。
…殺風景ね。」



この部屋を殺風景?



この前、家具を足して結構ものを飾ったのに。



静乃も、「これなら居心地良さそうね。」って褒めてくれたのに。





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