フラスコの恋
成海さんとの出会いは私が21歳の時。

障害者施設の職員として就職して一年目の11月。

同期の綾乃ちゃんが合コンやろうよ、と誘ってくれた。

綾野ちゃんの彼が防衛大の4年生で、そのひとにかっこいい人を連れて来るように頼んでおいたから、と。

その頃彼氏どころか好きな人もいなかったし、女ばかりの職場にうんざりもしていたので、私は喜んでついて行った。

そこに、成海さんがいた。


横浜駅で待ち合わせして、約束通り私も綾乃ちゃんも一人女友達を連れてきて、女4人で待っていた。

綾乃ちゃんの友達の笠原さんは、類は友を呼ぶのか、どことなく色っぽくといっていい顔立ちだ。

私の友達の加奈ちゃんは底抜けに明るく、顔もかわいい。

女4人で待っている間、お互い自己紹介をして過ごした。

「今日はよろしくお願いしまーす」

「防大生だから、エリートだよ」

「抜け駆けありね」

4人で何か秘密を抱えあうように、きゃあきゃあはしゃぎながら、すぐに来る出会いを期待して待っていた。

そこに、綾乃ちゃんの彼、吉川さんが来た。

「おまたせ」

笑顔で4人に向かって礼儀正しく挨拶する吉川さんに、綾乃ちゃんが聞く。

「他の面子は?」

「そこにいるよ」

と、近くにいる3人の男性に目を向ける。

すばやく3人を見渡して、綾乃ちゃんの表情が変わる。

そして吉川さんの袖を引っ張り、少し離れた場所でなじっている。

「話がちがーう!」


そんな二人のやりとりを横目に、私もこっそり3人を見渡した。

さすがに体格のいい人が揃っている。

確かに特別男前、という顔立ちではない方たちではあったが、ジャッキー・チェンとか

格闘技系の人が大好きな私は、みんなかっこいいのに、と思っていた。

その中に、成海さんがいた。

太いつり上がった眉。

きゅっとしまった一文字の口。

まっすぐに伸びた背筋。

あっさり、ほんとにあっさり私は恋に落ちた。
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