フラスコの恋
陽紀を幼稚園に送り、買い物にはまだ早い時間なので一度家に帰る。

ほっと一息。

マンションの入り口で郵便物を確かめると、旅行のパンフレットが届いていた。

そっか。

もうあと一週間だ。

家に入り、中身を空けると日程表が入っている。

往復、千歳空港利用。

その千歳の文字をじっと見る。

・・・千歳かあ。

確か、今年の綾乃ちゃんからの年賀状は千歳からだった。

吉川さんと綾乃ちゃんは結局あのまま結婚して、吉川さんは希望通り航空自衛隊のパイロットになった。

転勤に次ぎ転勤で、中々新しい場所に馴染めないと綾乃ちゃんは漏らしていたが、それでも吉川さんについていっていた。

私の結婚式以来だから、綾乃ちゃんとはもう7年も会っていないことになる。

会えないまでも、年賀状のやりとりも続いていたし、今この機会を逃すと一生会わないような気もする。

それももったいないし。

でも、ずっと連絡とっていなかったのに、いきなり7年ぶりに連絡するのも結構勇気がいる。

暫く悩んで、それでもいきなり電話する勇気もなく、かといってメルアドも知らないので、FAXすることにした。

来週、家族で北海道に行くこと。

往復便の時間も書いた。

主人と、お姑さんと、小さい子供も連れて行くので、思うように時間はないけど、千歳まで行く機会はなかなかないので思い切って連絡入れてみた、と。

綾乃ちゃんはどうしてる?

結婚前の、20代の頃を思い出しながら、すごく久しぶりに綾乃ちゃんにFAXした。
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