忌み子
壱.儀式/奇妙な慣わし
 


その夜は、月が空に大きく姿を現わしていた。


木々がザワザワと犇めき合い、これから行われる“儀式”を可笑しとばかりに騒ぎ立てた。



月明かりの乏しい畳の一室、少女は般若の面を着けていた。白装束を身にまとい手にはしっかりと短刀を握り締められている―…‥








『忌み子は、死なねばならぬ』





どこからともなく聞こえるおぞましい声に、少女は短刀をそっと首に突き付けた。



『其れが、こが血筋が慣みどもなり…』








少女は息を止め、短刀で己の首を裂き斬った。



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