パリ・ローマ幻想紀行
美術館の中に入ると、ピオ一世が創った螺旋階段がある。この階段は何かの映画の場面で見たことがある。私は足早にこの階段を登り、螺旋状に移動している人の流れに混じっている伊沙子さんを上からビデオカメラに収めた。館内は様々な国の観光客でごった返していた。階段を登りきったところで、添乗員さんがツアーグループの人数を確認し、「もしも、グループからはぐれたら、この階段のこの場所で待っていてください」と言ってくれた。
 風光明媚な観光地の旅行とは違い、歴史上の彫刻や絵画、建造物は、見る人の心によって色々な表情を現す。仲間同士がお喋りしながら歩いている人はいない。旅行者はそれぞれ孤独である。私はローマの歴史、特にキリスト教会の歴史とイエスの教えとの間に大きな落差を感じた。急に私の周りから雑音が消えた。
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