パリ・ローマ幻想紀行
(2)ある人との対話
「あなたは、私の教会を建てよと、ペテロに言ったそうですが、本当ですか?」
「言ったかも知れないのぉ」
「膨大な人力を酷使し、途轍もない大きく豪華なサンピエトロ大聖堂を建て、権力を得て教皇領を確立し、バロックによって教会を飾り立て、この飾り立てにより多くの信者を誘い込み、信者からの寄進により、膨大な富を得て、歴代の教皇が自分の住家として気まぐれに、かつ、思うが侭に改築増築を行い、古代ローマの美術品を掻き集め、権力、地位、富みを勝ち取る教会を作れと言ったのですか?また、教皇党と皇帝党との長い血みどろの戦いをし、キリスト教会に背を向ける者を皆殺しにする、権力、地位、富みを得るための教会を建てよ、と言ったのですか?又、権力、地位、富みをふんだんに謳歌している皇帝党を倒すことによって、自分が権力、地位、富を得て謳歌するための教会を建てよと言ったのですか?」
「私は、権力、地位、富を棄てよと言ったのじゃ。後に残るのは何かと言うことじゃ」
「教皇はあなたの教えに背いていると言うことですか?」
「いや違う、私は人に教えたりはしない。ただ自分を曝け出して語り合うだけじゃ。そしてその人を人として認めることじゃよ」
「どういうことですか?」
「それは自分で考えることじゃ。いや、考えそして体感することが肝心じゃよ。体感すること、これは人に教えてもらってできるものではないからのぉ」
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