ひまわり


そう言えば、さっきあたしを助けようとしてくれた時も、『莉奈』って名前で呼んでくれてたよね。


さっきは、あんな状況だったから気にならなかったけど……。


今思い出すと、急に恥ずかしくなってくる。


「恭平……」


彼に届かないように、そっと呼んでみる。


うん、悪くない。


恭平、恭平。


心の中で、何度も呼ぶ練習をした。


「キモっ!」


あたしのニヤける顔を見て、彼が震えあがる。


「うるさいっ!」


そう言いながら、あたしは彼を追い越して教会へと続く坂道を全力で走った。


風を全身で浴びるのはとても気持ちがいい。


「手紙っ、集めてくれてありがとうっ!」


面と向かって言うのは、なんだか恥ずかしくて、後ろから着いてくる彼に走りながら叫んだ。


「あーっ?なんてっ?」


後ろから、彼も叫ぶ。


「別に?なんでもなーいっ!」


恭平、ありがと。


あたしの手紙、ごみ箱から拾ってくれたんだよね。


嬉しかった。


恭平が、あたしを見ていてくれた事。


あたしね、気づいたんだ。


――あたし、恭平の事が好きだ。


「俺の事で悩ませて、悪かったなっ!」


彼の言葉であたしは立ち止まり、後ろを振り返った。


「えーっ!なんの事ーっ?」


なんて、とぼけてみせた。

くすぐったい。


彼の事が好きだと気づいて、なんだか走らずにはいられなくなった。



あたし、恭平の傍にずっといたい――。




< 162 / 339 >

この作品をシェア

pagetop