ひまわり


そして、ニッと笑った。


「平岡先輩は後ででいい。
午前中は、誰かに貸したげる」
 

顔いっぱいの笑顔を見せる真由は、あたしの腕を掴んでどこから回るかって聞いてきた。
 

廊下には、他校生もいっぱいいた。
 

仮装している人たちの間を抜けて、3年生の階に向かった。
 

平岡先輩のクラスは喫茶店をやっていると聞いて、まずはそこから行こうと真由に言った。
 

少し照れた真由は、また胸ポケットから手鏡を出してメイクと髪型をチェックする。



「いらっしゃいませーっ」
 

あたし達が教室を覗くと、元気いっぱいの声が飛んできた。
 

ウエイトレスの格好をした男の先輩が、あたし達を席へ案内してくれる。
 

平岡先輩の姿を目で探したけれど、どこにも見当たらなかった。


「残念……」
 

真由が、背もたれに体重をかけて口を尖らせた、その時。
 

教室の前のドアから、ウエイトレス姿の平岡先輩が入って来た。
 

先輩は、スーパーの袋を両手に抱えていて、それを教壇の上に置くと友達と楽しそうに会話をしていた。
 

ピロリン――。
 

横で何か音がしたと思ったら、携帯を掲げる真由が先輩の姿をパシャリ。
 

「かっこよすぎ」
 

目がトロンとさがる真由は、もう一枚パシャリ。
 

その時、先輩の目があたし達の座っている席に向いた。




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