ひまわり


あたしには、背中をさすりながら強く抱きしめる事しか出来なくて。
 

恭平は、それだけで十分だと微笑んでくれるけど、もっと、何か役に立ちたくて。
 

このもどかしさは、捨てる事が出来なかった。




「――莉奈」
 

ある日の放課後。
 

あたしは真由に呼ばれて、人気の少ない場所に移動した。
 

遠くでは部活の声も聞こえ、いつものゆったりとした時間が流れていた。
 

廊下はひんやりと冷たく、腰かけた階段からお尻にじんじんと冷たさが伝わってくる。


「どうしたの?」
 

めずらしく真面目な真由の顔を見て、あたしは遠慮がちに微笑んだ。
 

あまりにも静かで、真由が何かを言い躊躇っている呼吸が妙に響いた。


「莉奈……」
 

ようやく声を出したかと思うと、真由の眉間にしわが寄り始めた。





< 307 / 339 >

この作品をシェア

pagetop