pp―the piano players―
Widmung 4
空港にピアノが置いてある。
空港にあるストリートピアノだから「空ピアノ」と呼ばれている。
酒井君と一緒にレンタカーを返して、みんなと合流しようとロビーに向かっていたら、酒井君にニーナさんから電話があった。酒井君は穏やかな声で、うん、Ach so、 Und dann?、ja、わかった、行くよ、とドイツ語と日本語がごちゃ混ぜになって相槌を打っている。
「ピアノのあるラウンジのところにみんないるって。空ピアノだ」
わたしを見て、穏やかに声を掛けてくれる。
一時間前、酒井君は、わたしの話を感情をあらわにしながらも聞いてくれた。
酒井君がいたから、今のわたしがある。それなのに、わたしは酒井君の申し出を断った。謝ることはできなかった。


