pp―the piano players―
 圭太郎の隣にいたい、家族になりたい。
 早紀が、その願いを現実にしたいと強く思い、今、それを口にしている。
 それには、年月が必要だった。
 僕との年月が必要だった。
 僕が満たしたという。与えたという。
 それには確かな呼び名がある。
 愛だ。

 僕は左手に目を落とした。早紀が両手で包んでいる僕の左手。
 僕の手は、早紀の手の熱を奪っていたのではなかったのかもしれない。僕の手が、早紀の手を温め続けていたのかもしれない。
 僕は、君の願いを叶えたい。
 君の願いを叶えたい。

 早紀の両手に、さらに右手を重ねた。
 早紀はその手を見て、再び僕を見つめる。
 僕は自分の頬にまた、熱いものが溢れ落ちているのを分かっている。

「許さない」

 僕はもう耐えきれなくて、早紀の手を引き、抱きしめる。
 手だけでは足りなかった。僕の全身全霊をもって伝えたかった。
 柔らかくて、温かくて、か細くて、強くて、大好きで、愛おしさが止め処なくあふれる。離したくない。離したくない。
「酒井君」
 けれども、早紀が望むなら。
「幸せにならなかったら、許さない」

 早紀は僕の腕の中で何度も頷いた。
 僕の背中に手を回し、ありがとう、と何度も言った。

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