pp―the piano players―


「ありがとう、酒井君」

 早紀は体育館裏で、瞳を潤ませながら言った。その声は弾んでいる。

「ううん、こっちこそ、一緒に弾けて嬉しかった」

 ステージでは次のグループがアカペラでポップスを歌っていた。でもそれはもう聞こえないも同じ。コンクールの結果もどうでも良かった。僕には早紀しか見えていないし、聞こえていない。

「酒井君の、低音が、体に響いて、とっても気持ち良くて」

 その笑顔を、もっと見ていたいから。



「あのさ、早紀……」



 僕は自分の気持ちを言葉に乗せる。


おわり
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