Dragon Hunter〜月雲花風〜
そして不意にバルトはフロアの一画に鋭く視線をはしらせた。


「随分とええ趣味しとるなぁ」


沈黙。


「出てこいや。そこで見とらんと。なあ!アルタイルよお」


エドガーは反射的に腰のサーベルに手をやった。そういえば、とエドガーはバルトはこのフロアに入った瞬間から警戒を最大にしていた。そのことにいまさら気付く。今も彼からはぴりぴりした殺気にも似た気配が立ち上っている。



そして、ゆらりと、陽炎のように、人が現れた。




「まさか君が来るとはね」

穏やかに男は答えた。





◇◆◇

少女はびくりと体を震わせた。顔は蒼白で、脂汗が出ている。


「嘘だろ?まさか………」


何故生きている。『奴』は真っ先に殺したはずだ。


いや。
奴なら
有り得る。

あの、《アルタイル》なら…………。

◆◇◆



(この男が、アルタイル………)


これほど、裏組織のNo.2という肩書が似合わない男もいないだろう。

細身で長身。穏やかな風貌に柔らかな物腰。


だが、その一方で数々の犯罪者たちを相手取ってきたエドガーの勘は最大級の警告を鳴らしている。

こいつは危険だ、と。





そしてそれはさらにエドガーに告げる。奴の中で最も危険なのは、その『声』だと。


不思議な声だった。若くも聞こえるし、老人の声のようにも聞こえる。男にしては高く女にしては低い。一度聞いたら耳から離れなくて、そして、思わず聴き入ってしまうのだ。




 危険だとわかっていても。






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