時計塔の鬼
本人の美意識によると、何回も人に借りるのは別にいいらしい。
こっちとしては、迷惑極まりない話だけれど……。
本当に、さっさと席替えをして欲しい。
「ん」
たった一言。
というよりは、たった一音を発して、予備の消しゴムを投げ渡した。
「ありがとっ」
そう言って、隣りの男子は授業に戻る。
こんな奴でも、顔がいいせいか、かなりモテるらしい。
あくまで、人並みちょっと上程度だけど。
シュウと比べるのはいくらなんでも可哀相だ。
彼は……
シュウは美しすぎて、比べる前に対象が霞んでしまう。
そんな存在なんだ。
シュウは、鬼だから。