時計塔の鬼
「そのはずだけど?」
少し前の職員会議でも議題として出ていたと思う。
変更なしってことだったから、保護者は同伴可だ。
まぁ、保護者数は生徒の四分の一くらいで、半分が教師同伴。
残った四分の一が、一人か友達とだ。
とにかく、すごくたくさんの来訪があるから、教師はてんてこまいとなる。
実際、去年は本当にてんてこまいになってしまった。
そして、事故等にも注意を向けねばならないから、教師は当日、当番制で動かなければならない。
「そっかぁー……」
特大の溜め息をつけて、歩美がうなだれた。
心なしか、歩く速さも落ちた。
「何かあるの?」
そう問い掛けると、歩美は重く首を左右に振った。
けれど、すぐに、「ある……」と小さく呟いた。
わずかに縦に振られた首に、何やら哀愁が漂っているようにも見える。
「来るのよ……」
「はぁ?」
「来るの……お姉ちゃんが」