時計塔の鬼


「そのはずだけど?」


少し前の職員会議でも議題として出ていたと思う。

変更なしってことだったから、保護者は同伴可だ。

まぁ、保護者数は生徒の四分の一くらいで、半分が教師同伴。

残った四分の一が、一人か友達とだ。

とにかく、すごくたくさんの来訪があるから、教師はてんてこまいとなる。

実際、去年は本当にてんてこまいになってしまった。

そして、事故等にも注意を向けねばならないから、教師は当日、当番制で動かなければならない。



「そっかぁー……」



特大の溜め息をつけて、歩美がうなだれた。

心なしか、歩く速さも落ちた。



「何かあるの?」



そう問い掛けると、歩美は重く首を左右に振った。

けれど、すぐに、「ある……」と小さく呟いた。

わずかに縦に振られた首に、何やら哀愁が漂っているようにも見える。



「来るのよ……」


「はぁ?」


「来るの……お姉ちゃんが」


< 230 / 397 >

この作品をシェア

pagetop