時計塔の鬼
「それで、なんて答えたの?」
「あとはそのまま。会わせるから他言無用でって言っといただけだよ~」
「なんで?」
話すくらい別にいいと思うけれど……。
そこで、歩美は瞬く間に頬を染めた。
「あ、ほら……慎ちゃんのこととかさ」
「ああ……。ナルホド」
そういえば歩美と坂田君は幼馴染みだった。
それなら、歩美のお姉さんが坂田君を知っていても、無理はないのかもしれない。
「それでね、お姉ちゃんがちょっと変なこと言っ……」
歩美の声を遮って、突如、授業終了のチャイムが鳴り響いた。
ガヤガヤと職員室が次第に騒々しくなっていく。
ふっと視線を巡らせば、授業から戻ってきた教師の姿も、これから向かう教師の姿も目に入った。
そして、チラチラと質問かなにかをしに来ている生徒の姿もある。
「変な……何って?」
続きが気になって訊いたんだけれど、歩美が答えようとする前に戻した視界の端におツボの姿が映った。
いつの間に帰ってきたんだろう……。
それは歩美も同じだったようで、蛙が潰れたような声を出した。
その後、ジェスチャーで“また後でね”と伝え、互いに授業準備に取り掛かった。