時計塔の鬼


場を誤魔化すための、乾いた笑みを張り付かせた歩美。

戸惑ったように田中君を見据える坂田君。

みかんちゃんは無表情だった。



視線を再び、前へと向けた。

田中君は、笑みを浮かべて、その真意を悟らせない。



わからない。

なぜ?

どうして?

どうすれば?

その言葉が、頭の中をおそらくはツバメよりも速く、駆け巡る。



「……何、言ってるの?」



やっとのことで搾り出すことができた言葉は、掠れてしまっていた。

けれど、顔だけはポーカーフェイスで乗り切ろうと、奥歯に力を込めた。



「本当のことっすよね? 少し観察してたら簡単に……」



田中君が言えたのは、そこまでだった。

――バッチィィィン……



廊下に乾いた音が響き渡った。

廊下だからか、何度かエコーされて、その音は消えた。



< 314 / 397 >

この作品をシェア

pagetop