時計塔の鬼
場を誤魔化すための、乾いた笑みを張り付かせた歩美。
戸惑ったように田中君を見据える坂田君。
みかんちゃんは無表情だった。
視線を再び、前へと向けた。
田中君は、笑みを浮かべて、その真意を悟らせない。
わからない。
なぜ?
どうして?
どうすれば?
その言葉が、頭の中をおそらくはツバメよりも速く、駆け巡る。
「……何、言ってるの?」
やっとのことで搾り出すことができた言葉は、掠れてしまっていた。
けれど、顔だけはポーカーフェイスで乗り切ろうと、奥歯に力を込めた。
「本当のことっすよね? 少し観察してたら簡単に……」
田中君が言えたのは、そこまでだった。
――バッチィィィン……
廊下に乾いた音が響き渡った。
廊下だからか、何度かエコーされて、その音は消えた。