キミノタメノアイノウタ

「あ」

「持てばいいんだろ?」

リュックサックの持ち手を掴んでいたのは、この町の田舎具合を嘆いていたあの人だった。

私から奪い取ったバカみたいに重いリュックサックを軽々担ぐと、サッサと前を歩いていってしまう。

「いいよ!私が持つから!」

長時間の旅で疲れている人間にそこまでさせるほど非道な人間ではない。

「これから世話になるんだし……これぐらいはする」

私はその台詞に感心してしまった。

(兄貴の友達にしては常識があるなあ……)

少しは見習えと兄貴の耳元で叫んでやりたい。

旅は道連れというけれど、常識の外れの兄貴にノコノコついてきたこの男に俄然興味が湧く。

「ねえ、名前は?」

あの気まぐれ兄貴がいつ帰るかなんてわからないけど、しばらく家に住むなら名前くらいは知っときたい。

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