清皇学院記

「…か、…玲華」

 自分を呼ぶ声に気づき、

ゆっくりとまぶたを開けた。

そこには蓮の姿が何重にも見え、

だんだんと実像がはっきりした。

「玲華」

 蓮は何回も玲華の名前を呼んだ。

玲華は辺りを見回し、今自分がどこに

いるのかを確認しようとした。

「蓮…ここは」

「俺の部屋だよ。倉庫から

あの、黒いごっつい人たちに

送ってもらった。あいつら

見方なんだろ?」


 小見家のSPについて言っている

のだが、蓮の言い回しがとても

おかしかったので、玲華は笑った。

「うん。亜樹菜の家のSPに

協力してもらうことにしたの。

そうしないと助けられないし」


 蓮は玲華を抱きしめた。

玲華は肩に零れる雫を感じた。

「蓮…?」

「あんなことに巻き込んで

ホントごめんな。もう大丈夫

だとは思うけどさ…。

玲華、それでも俺のそばに

いてくれるか?」

「もちろん。ずっと…

ずっとそばにいるから」


 玲華は蓮を強く抱きしめた。

蓮は泣くのをやめず、しばらくの間

玲華から離れなかったのだ。
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