魔女の瞳Ⅵ
第三章
先に動かれるのは得策ではない。

先手を取ったのは桜花だった。

「      っ!」

高速詠唱で行使したのは『氷壁』の魔術。

5メートルはあろうかという高さの氷の壁で、お母様の周囲をグルリと取り囲む。

「児戯ね」

無詠唱で右手に『獄炎』の魔法を灯すお母様。

地獄より召喚した、現世では有り得ないほどの高温の炎だ。

桜花の氷の魔術など、たやすく溶かしてしまう。

「筋は悪くない。基礎もしっかり出来ている。でも…」

お母様は一歩歩み出た。

「師匠がメグならば、私には勝てないわ…私はそのメグの師匠なのだから」

「……!」

桜花が後ずさる。

無理もない。

魔術戦闘であの人に勝てる者などこの世にはいない。

現世最強の魔女。

お母様に異議を唱える事は、魔女の世界では自殺行為だった。







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