魔女の瞳Ⅵ
驚く桜花の顔を、お母様は笑いながら見つめる。

…私はあのお母様の魔術を知っていた。

『枯渇』の魔術。

魔力を持つ者にとって、あんなに始末に負えない魔術はない。

あの魔術は、その名の通り触れたものの魔力を『枯渇』させる。

そりゃあ禁呪クラスの強力すぎる魔法なんかは例外だけど、たとえば並みの魔術や、その魔術を行使する術者の身に触れたりしたら…その身に蓄積されている魔力を枯れさせてしまうのだ。

術者や人外にとって、魔力は生命力にも似ている。

魔力を枯れさせてしまえば、魔女は手足をもがれるに等しい。

魔術を行使できない人外にしたって、その戦闘力を大きく減少させられる結果になってしまう。

肉体を傷つけずに無力化する魔術。

故にお母様は、この『枯渇』の魔術を好んで使用する。

「さぁ桜花さん」

お母様の周囲に、二十近い真紅の光球が発生した。

「魔女生命…絶たせてもらおうかしら」





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