シェイクとルシア~黒き銃を持つ二人~
自分の国
   自分の国



 三年の歳月というのはそれほど変わるものではなかった。今でも変わることのない街並み。この角を曲がるとどうなるか、たぶんそこも変わっていないだろう。



 やはり曲がった先もの風景もシェイクにとってはそれほどといった感じだった。


「なんだか寂しい街並みねえ。シェイクの生まれた国といったからてっきり綺麗なところだと思ってたわ」



 ルシアが助手席で退屈そうに流れる街並みを見ている。彼女の視線の先には木造で作られた簡素な家だった。家々は全て同じ規格で等間隔に窓や家の玄関が並んでいる。そんな同じ景色が続くので、時折大きな欠伸を噛み殺す場面も見られた。シェイクは特にそれについて何も言わなかった。


「あれ?怒らないの?自分の国のこと私がさんざん言っているのに?」


「別に……。怒ったところですぐに変わるわけでもない。それに俺はもうこの国の人間じゃないんだよ。三年前に国を飛び出した男だ」



 シェイクは特に何も言わないまま車を北へ動かしている。そこには自分の実家があるということらしい。


 三年間、音沙汰なく息子が帰ってくる親の気持ちとはどんな気持ちなのだろう。ルシアは考えていた。自分の時とはまた違うだろうが、喜んで迎え入れてくれるはずだ。息子の心配をしない親などいないはずだ。


「ルシア……。どうした?顔がにやけているぞ」


 シェイクの一言でハッと現実に戻りサイドミラーで自分のゆるんだ筋肉を再び引き締める。


「大方、俺と両親の感動の再会を想像していたんだろ?」


「そんなわけないじゃない!私がそんな人間でも……」


 ルシアの抗議が言い終わる前にシェイクが思うね。と答える。シェイクは鼻を鳴らして勝ち誇った笑みを浮かべている。一方のルシアは悔しさを前面に出す。声にならない唸り声を上げる。



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