シェイクとルシア~黒き銃を持つ二人~
「昨日言ったよな?『俺とルシア。何年一緒に旅しているんだ?』って」



 それを聞いたルシアは頬を赤らめる。



「シェイク……。それって。ぷ、プロ」
 


 思い切って顔を上げると、目の前にシェイクの左手があった。ルシアの額に向けてデコピンを食らわせる気満々だ。



 ルシアがあっ。といった瞬間にシェイクのデコピンがルシアの額に命中した。鈍い音が車内に響く。思わずルシアの顔が後ろにのけぞった。すぐにルシアは顔を起こして、シェイクのことを睨んでいる。額にはデコピンの跡がしっかり赤く残っており、肌が白いルシアにとってこの赤く残った跡はとても目立つ。



「ちょっと!何するのよ!?」



「ん?ルシアが変なことを言うから。勝手に恋人にしないでね?また綺麗に跡が残るようなデコピンを食らわすからね」



 ルシアは抗議をしているがシェイクが笑いながらを聞き流す。
シェイクはまるで毎日ここを通っているような感じで運転をしている。迷うこともなければ交差点で右往左往することもない。その姿を見てルシアが感心する。



「三年前だって言ってたけど、結構覚えているもんだね」



 そんなルシアをちらっと見てシェイクがルシアに質問する。



「一昨日の夕食、何作ったか覚えている?」



 ルシアが首をかしげて本気で何を作ったか悩んでいる。



「えっと……焼き肉?」



 答えを聞いたシェイクは大きな溜め息をつく。作ってる側のシェイクにとって毎日毎日、趣向を凝らして作っている料理を『焼き肉』というカテゴリにまとめられてしまっては作りがいもなくなってしまう。



「やっぱ人の記憶なんてそんなもんだよ。自分が特に覚えようとするもの以外はあっという間に自分の中から抜けてくもんだよ」



 果たして今言っていることはフォローして言っているのか、けなしているのかルシアには全く分からない。
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