シェイクとルシア~黒き銃を持つ二人~
 シェイクは何も言わない。ただルシアが次に言うことを待っている。


「もし、自分が帰ってきたら自分が責められると思って、彼女を冷たくあしらったんでしょ」


「そ、そんなつもりじゃ……」


「そんなわけないって?嘘言わないで!私分かるんだよ!軽い気持ちであの人に言ったのかもしれないけど、あの人は傷ついている!」


「俺は……。俺は……」


 戸惑うシェイクをよそにルシアは冷めかけたコーヒーを一気に飲み干した。砂糖も何も使わずに飲んだ。


「苦い……。この苦さはブラックコーヒーを飲み慣れている人には分からないでしょうね!」


 そう言ってルシアは音を立ててカップを置いて部屋を出て行った。ドアの閉める音が大きく部屋に響いた。


 ルシアが出て行ってしばらくしてシェイクは飲みかけの自分のコーヒーを除く。真っ黒のブラックコーヒーをルシアの言葉を反芻させて残りを飲み干す。


「……苦い」


 普段は飲み慣れたブラックコーヒーがいつも以上に苦く感じたのは自分にも人間らしさというのが残っているからだろうか。


 それを飲んでシェイクは自分のベッドに飛び込んだ。眠ってしまえばこのことから離れることができる。夕食の時間までさほど時間はないが、今は少しでもこの嫌なことから忘れたい。


「逃げてる、か……。俺はやっぱり弱いままか……」


 シェイクは自分の腕で目を隠し、自嘲的に笑うしかなかった。
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