シェイクとルシア~黒き銃を持つ二人~
 館長は記念館の照明をすべて落とし終えると駐車場に停めている車に乗り込んだ。ルシアは後部座席でいいと言ったが、館長が無理に助手席に押し込んだ。
 

不思議な感覚だ。いつもシェイクの車に乗っている事もあって、隣に座る人が違うとまったく雰囲気が違う。人が違うので当たり前だが、車の乗り方や運転の仕方、細かなことでも違和感がある。


そして同じ国で作られたはずの車だがこちらの方が乗り心地が悪い。固いクッションにリクライニングしないシート。いつも楽な体勢で車に乗っているため窮屈に感じた。座っているとすぐに痛くなるので重心を変えながら座り続ける。


「ごめんね。うちの国の車はみんなシートが固いのよ。ルシアちゃんはシェイクの車に乗っているからシートは柔らかいもんね」


 運転しながらにこやかな会話をする彼女をルシアは不思議な目で見ていた。なぜ彼女はシェイクのことに詳しいのか。なぜシェイクの乗っている車はシートがいいことを知っているのか。ルシアは我慢しきれず館長に尋ねてみる。


「どうして館長さんはそこまで知っているんですか?館長さんはシェイクとどういう関係だったんですか?」


 一度だけ館長はルシアの顔を見る。記念館の周辺は農地なので街灯というものはないが、真剣な顔をしているように見えた。


「私はね。シェイクのお嫁さんなの」


「えっ……?お嫁さん?」


 ルシアの声のトーンがすっかり変わってしまった。てっきり彼女はシェイクの姉か妹だと思っていたが、まさか他人だったとは思ってなかった。


「ああ。誤解しないでね。お嫁さんはお嫁さんでも両親の都合で私とシェイクは結婚させられる予定だったの」
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