シェイクとルシア~黒き銃を持つ二人~
「商売第一主義の親父にしては随分粗すぎる。俺がいた時は埃一つあればやり直しさせていたぞ」


 独り言を呟きながらシェイクは雑巾を絞って棚を水ぶきする。その手つきは慣れたもので隅々くまなく綺麗にする。先程までとは見違えって綺麗になった。


 次に棚に飾られてある銃のメンテナンスだ。埃をかぶってしばらく経つためちゃんと作動するのか微妙なところだ。シェイクは端に置かれてある物から分解を始める。慣れた手つきで手早く分解し、油を差して数度の射撃の動作をさせ異常がないとみると元の位置に置き、隣の銃の分解に取り掛かる。棚には十数の銃が並んであったがあっという間に完了させた。


「相変わらずね。これならあなたが帰ってきてもこの店をシェイクに引き継げるよ」


「ふん。ようやく帰ってきたか出来そこないが」


 カウンターの奥から中年の男性が出てきた。白髪交じりでTシャツ一枚とジーパンというラフな格好だ。顔にはいくつものしわが深く刻まれておりとくに眉間のしわは深い。


「三年も外でフラフラしておったのだろう?まったく事件を起こして」


「あれは俺が起こしてない!何度も言ってるだろう!犯人は死んだ!もうそれで終わってる!」


「終わっているもんか!お前は毎日毎日、遺族連中に罵られ挙句の果てに国の外に逃げただろう!?そのおかげでこっちの商売は成り立たなくなってしまった!どう取り返しを付ける気だ」


 父がまくしたてるように怒鳴り終えると、急に膝をついてせき込んだ。さっきまでの以西はどこに行ってしまったのか、表情も弱くなっている。


「親父どうしたんだ!?」


 近寄ろうとするシェイクを父は右手一本で制する。


「お前なぞわしの息子でも……ゴホッ!」


 再びせき込み始めた。母は父の背中をゆっくりとさすり水と何かの錠剤を持ってきた。父はそれを慣れた手つきで水と一緒に飲みこんだ。


「お父さんはね。あなたがいなくなってから毎日毎日遺族の方と口論していたの。そのせいで倒れて以降薬を飲み続けてるの」


 父はフンと鼻を鳴らしそっぽをむく。さっきまでの表情ではなく相変わらずのムスッとした表情に戻っていた。
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