シェイクとルシア~黒き銃を持つ二人~
6
「それじゃあ、私は行くわね。今日も人の来る予定もない館長の仕事をしにね」


「ああ。俺たちも荷物を片づけて出る予定だ。結局最後まで世話になったな」


「気にしないで。だって私はあなたの『許嫁』ですもの」


「あのな……」


「冗談よ。それじゃあねルシアちゃん。また縁があったら会いましょう」


 一礼すると彼女は車に乗り込んでエンジンをかける。二度、エンジンを吹かしようやく車を動かせる状態に持ってこれた。


「それじゃあ、俺たちも行くか」


 そう言ってシェイクが自分の車に向かって歩き始めた時、


「シェイク!」


 後ろで館長が手招きをしてシェイクを呼ぶ。少し離れた所にいるので走らなければいけない。


「どうした?」


「あの子、絶対に守ってね」


 最初は何を言っているのか解らなかったが、彼女の目線の先を見て理解した。


「ルシアのことだな。言われなくても分かってる。なんせあいつは――」


「委員長にそっくりだもんね。特に目の部分が。守れなかった分、彼女は絶対に幸せにするのよ」


 それを聞いてシェイクは驚いて目を瞠った。


「やっぱ気づいていたか」


「当たり前でしょ。でもびっくりしたわ。あそこまで彼女に似ているなんて。まるで……。いえ何でもないわ。――三年前あなたは私のことより彼女のことが好きだった。でもあの事件で守れなかった自分をひどく悔やんでいたものね」


 シェイクは力なくああ。と呟いた。目の前で人が死なれるのは辛い。それが親しい人でもそうでなくとも平等だ。
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