シェイクとルシア~黒き銃を持つ二人~
 何分経っただろうか、先に口を開いたのはシェイクだった。


「お前の言う通りだった。俺はこの事件の陰から逃げていた。両親と会えば必ず責められると思っていた。だから会うのを恐れていた」


 シェイクの話でルシアも心境を語る。


「私こそ勝手な行動をしたことは謝るわ。でも今、シェイクがお父さんたちと会わないと絶対後悔すると思ったの。偶然でも私はお父さんたちと会えた。あの時すごく嬉しかった。こうしてシェイクと会って旅をしなかったら、私は一生お父さんたちの顔を見ることなく生きていたと思う。その喜びをシェイクにも教えたかった……」


 そう言うとルシアの口から嗚咽が漏れる。そして手で涙をぬぐう。どうやら自分の取った行動がどれほど危険だったか自覚しているようだ。


 シェイクは泣いているルシアの左肩をポンと叩く。その手は少し冷たかったが逆にその冷たさが心地よかった。


「ありがとう。ルシアのおかげで俺は逃げずに立ち向かうことが出来たと思う。……ありがとう」


 シェイクの言葉はすこしたどたどしかったが、これが彼の目いっぱいの感情表現だ。ルシアは眼尻に溜まった涙をぬぐって、シェイクの手を握り返した。


「こちらこそ!これからもよろしくね!」


「いい加減、仲直りできましたか?」


 自分の家なのでノックもせずに部屋に入る館長が見たのは二人が仲睦まじくしている姿だった。それを見た彼女は長い溜息をついた。


「まったく……。さっきまで何も言わなかった二人がこうも見せつけてくれるとはね……。やはり旅は人の心を開放的にさせてくれるのね……」


「ちょっと!そんなつもりはないって!?なあ!?」


 シェイクはルシアに同意を求めるが、ルシアは頬を赤らめてシェイクのことを上目遣いで見てくる。


「俺はそんなつもりで言ってない!」


 シェイクの全力の抗議も二人の女性には届くことはなかった。
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