忘れ去られたもの
「書こう? 確かに、陵市は疲れるだろうし、わたしも正直見てられない時があるよ? けど、その先に何かがあって、その光景は、いつも綺麗。あの書き上がった瞬間っていうのは、何か、世界が生まれ変わった気がするの。……けどね! もし、陵市、陵市が書きたくないっていうなら、わたしは何も言えないし……」

「あー! うん……。書くよ。書く」陵市は挟んだ。

「……冗談。そう、冗談だよ。酒も抜けてきたし、実はうずうずしてるんだ。その代わり、……官能小説になりそうになったら止めてね。あと、書き終わったら、覚悟しといてよ。うん、よし。じゃあそれだけのために頑張る。性欲は偉大だ。信じなければならない、猿故に。じゃあ出始めに三千文字はやるから。初めはもう出来てるんだ」

 陵市は颯爽と椅子に座り、「うん!」わたしも椅子に座って、キーボードに手を置く。

「うん。準備オッケー。何時でも良いよ?」

「よし」陵市は大きく息を吸い込んで、ゆったりと語り出した。

 冒頭。陵市から出たその言葉に、わたしは「えっ?」、そう訊かずには居られない。初めから、本当にそれ? 後ろを振り向いたわたしに、「うん」陵市は自信あり気に首肯し、軽やかな笑みを浮かべたのだった。
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