【BL】背徳の堕天使



昨日貰った名刺を取り出して、銀行の名前を確認する。


わりかし近い場所にあるそこへ、俺は賢杜の困惑した顔を想像しながら、ゆっくりと向かった。





銀行は混み合っていた。


賢杜を探してカウンターの向こう側をキョロキョロと見ていると、にこやかな女性が俺の近くに立ち止まった。



ロビーウーマンとでも呼ぶべき彼女は、銀行員らしい制服に身を包み、明らかに怪しい俺を警戒する様子もなく「本日はどのような……」と来店目的を尋ねる。



ここで「賢杜に逢いに」と言ったらどんな反応をするかなと思ったが、俺の口から滑り落ちたのは

「通帳を作りたいんですけど」

という平凡な言葉だった。



それを受けた彼女は、「有難うございます」と軽く頭を下げる。



その時、彼女の頭ごしに、ある人物を見つけた。


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