ウソ★スキ
“あの日”以来、放課後になると先輩はまた、学校の前であたしを待ってくれるようになった。

結局、旅行の後、先輩が姿を見せなかったのはほんの一週間程度。

だから、この前の目立ちすぎた行動もあって、周囲は誰もあたしたちが別れたなんて思っていない様子だった。


「美夕、彼氏とケンカでもしてたの?」

友達にもそう冷やかされた。


──全部、先輩の思惑通りだ。



だけど、現実は違っていた。


「今日もやっぱり乗ってくれないの?」

あたしが以前のように抱きかかえられるのを嫌がるせいで、先輩は毎日、あたしが自発的にバイクの後ろに座るのを根気強く待つ羽目になった。

ついこの前まで、毎日座っていたはずなのに。

先輩の身体にしがみついて、家まで送ってもらっていたはずなのに。


「危ないから、もっとしっかり捕まって?」

そう言われても、

どうしても、

あたしは先輩の身体に手を回すことが出来なかった。


「俺はすっかり悪者だな……」

先輩が哀しそうな顔でそう言うたびに、あたしは「ごめんなさい」って謝りながら、止まったままの原付から降りた。


そうして、

先輩は原付を押して、
あたしはその隣に並んで、


あたしたちは、毎日、長い道のりを歩いて帰った。


< 508 / 667 >

この作品をシェア

pagetop